安全な地下水を取り戻す未来のために~PFAS汚染に対して私たちにできること

7月27日、杉並区で東京・生活者ネットワークの集会を開催。寺田良一さん(環境社会学/明治大学名誉教授)をお招きし、多角的な観点から地下水のPFAS汚染問題に対して私たちにできることを考えあいました。杉並ネットの奥田雅子区議が司会を務めました。

 

●地下水源の保全と「水源自立」をめざした住民運動
寺田良一さんからは、市民運動と地下水の歴史についてのお話もありました。1982年に府中市・三鷹市の水道水源井戸からトリクロロエチレンが検出される地下水汚染が問題となりました。その時に既に都水に統合されていた府中市の水道は取水停止としましたが、未統合の三鷹市はばっ気して除去する装置を付け、取水を再開。府中市ではその後、他の井戸への汚染が拡散されていることが分かり、市民の運動により、府中市でもばっ気しながらくみ上げを再開することになったそうです。

1970年代から「都水一元化」が進められましたが、地下水源を浄化しダムに頼らない持続可能な「水源自立」を維持するために、多摩地域を中心とした市民とともに生活者ネットワークも運動を続けてきました。

●PFAS対応の難しさ
永遠の化学物質と言われるPFASは、分解されず、また、揮発性が小さいためにトリクロロエチレンのようにばっ気による除染が難しい、どこにでもある化学物質であるなど、PFASの特性ゆえの困難さも指摘されました。

除去方法の確立や、除去した物質を無害化する技術の確立が急がれます。行政の持っている調査データをはじめ、市民への情報公開・情報共有をすすめながら、予防原則にもとづき、一日も早い対策が必要です。

●国や都、各地域の取り組みから
衆議院議員の大河原まさこさんから、岡山県吉備中央町への視察をふまえて、PFASを除去した後の廃棄のルールまで管理できる廃棄物処理法で位置づける必要性についてなど、問題提起がありました。

生活者ネットワークの地域ネットからの報告もありました。
①調布ネットの木下やすこ市議からは、市民とともにPFAS問題に取り組み、市の独自調査を予算化した事例などの報告

 

②武蔵野ネットの西園寺みきこ市議からは、補正予算対応で災害用井戸に浄水器を設置した事例などの報告

③立川ネットのあべみさ市議からは、米軍横田基地に隣接し、多摩地域で最も高いPFAS濃度が検出されている立川市は、新市長誕生によりPFAS庁内対策本部を立ち上げ市独自の調査が始まったことなどの報告

④国分寺ネットの高瀬かおる市議からは、国分寺市の国分寺市のむかしの井戸の汚染値の推移の報告や、湧水及び地下水の保全に関する条例の紹介がありました。

地下水保全に取り組んできた活動を含めて各地域で情報共有し、連携して活動する、生活者ネットワークらしい報告の場となりました。

都議会では、2019年5月にPFASが全国的な問題として報道された翌月の6月、都議会での議会質問としては生活者ネットワークが一番早く取り上げ、山内れい子前都議が文書質問を行うとともに、知事水道局長宛てに申し入れを行ったことから始まったこれまでの取り組みを報告しました。以後、議会質問や予算要望など継続して取り組んでいます。

2024年2月5日には、各地域ネットとともに東京都環境局、福祉保健局、水道局へのヒアリングをふまえて2月8日に国への要望書を提出とヒアリングを行うなど、連携しながら取り組んできました。

集会の最後にアピール文を読み上げ、参加者一同で共有しました。

各地域で独自の水質調査も進んでいます。都の持つデータとそれぞれの調査結果を東京都が集約して、浅井戸、深井戸など場所や深さ、数値を可視化して都の汚染状況の全体像を俯瞰できるような情報連携ができないか、という意見も出されました。都の知見を活かした除染、無害化対策、子どもも含めたバイオモニタリングなど、都としても主体的にすすめていくべきです。

命の源である水をまもり、安全な地下水を取り戻す未来のために、地域と連携しながら今後も取り組みを続けていきます。