東京の地域公共交通と再生可能エネルギーを考える
東京都交通局は、都営地下鉄やバスなど公共交通を運行するほか、発電事業も行っています。5月8日、自治研究センターの「まちづくりウォッチング」に参加し、水力発電所の見学と都営バス事業について学びました。
●水力発電の地産地消を
多摩川の上流にある小河内ダムは、東京都民の水道水源となっています。このダムの水を使って東京都交通局が1957年から水力発電を開始、小河内ダムのそばと、その下流にある合計3か所の水力発電所を運営しています。1年間の発電量は一般家庭のおよそ3万5千世帯分の使用量に相当します。
発電した電気は長らく東京電力に売電していました。生活者ネットワークは、エネルギーの地産地消の一環として都庁などの都有施設でこの電気を使うよう提案してきました。交通局は、2021年度から都営バス営業所に活用を始めました。さらに、今年度から、東京さくらトラム(都電荒川線)を100%東京産の水力発電で運行することを条件に売電先を公募しました。発電量のうち都営バスに約6%、東京さくらトラムに約3%が使われ、残りの約9割は多摩地域の自治体を含め、都内で使われており、地産地消が進みました。
●少子高齢社会における公共交通の役割
東京都の推計では、都内の人口は2030年をピークに減少に転じます。既に多摩地域など高齢化のすすむ大型の集合住宅では働く世代が激減し、通勤でのバスの利用者が減ったためにバスのルートが変更されたり、便数が減っている地域があります。
高齢になり車の運転をやめた人が、バスが利用できない時にタクシーを利用しようとしたところ、タクシーの予約ができない、配車の手配ができずに利用できなかったなど、移動に苦労している切実な状況も聞いています。今後、車や自転車を手放す高齢者がさらに増えていく一方で、運転手不足を背景に、タクシーや路線バスの撤退も懸念される中、人口減少・高齢社会を見据えた地域公共交通のあり方と都営交通の役割についての議論が急がれます。
3月の公営企業委員会では、都民生活に最も身近なバスの役割について質問しました。都営バスの運行エリアは23区内が中心で、多摩地域では一部です。小平から青梅街道に沿って青梅方面を運行する「梅」系統では、年間3億円の経常赤字を、交通局・東京都・沿線自治体がそれぞれ1/3ずつ負担して運営しています。都内では、ほかにも7路線で自治体が経費負担をして運行しています。民間事業者や自治体だけでは担えない交通不便地域の解消を、地域の実情にあわせて都営バスと自治体が連携したり、共同運行するなど検討を求めました。