決定の場にもっと女性を! 命とくらしのためにジェンダー主流化

東京・生活者ネットワーク都政フォーラムで、東京大学名誉教授で経済学者の大沢真理さんのお話を伺いました。

●深刻化する女性の貧困
日本の社会保障制度や税制は世帯主単位で制度設計がなされ、世帯主本位の考え方が様々な影響を及ぼしてきました。家族のあり方が変わってしまったのに、雇用・処遇、意識、制度・政策など、いまだに昭和時代のままで機能していない日本の政治。つい先日は、「結婚して地方に移住する女性に60万円」に非難が集中し、実質上の撤回となるなど、ジェンダー平等からは程遠い状況です。

平成時代の30年間で、社会保険料負担が急増し、国民全体の累進度が下がりました。高所得者がより優遇され、低所得者への負担がより厳しくなったということです。低所得者層には女性が多いので、女性の貧困にも大きく影響しています。日本のシングルマザーの貧困率はOECDで最悪、若年層の貧困率も高いことが未婚率の上昇につながり、少子化、人口減少につながっていると大沢さんは指摘をされました。

社会保障を性別の視点から見ると、年金は現役時代に所得が高かった「男性の保険」、介護・高齢者医療は平均寿命が長い「女性の保険」というお話がとても分かりやすかったです。「女性の保険」である介護保険の大幅改悪により介護離職がすすみ、女性の貧困がますます深刻化するという悪循環に陥る状況の中で、出産する女性が増えるでしょうか。

防衛費は毎年うなぎ上りに上昇し、5年間で43兆円もの財源が充てられる一方で、少子化対策にはわずか3.6兆円。そのうち1兆円は医療保険料として徴収されます。高齢女性への負担が大きくのしかかっています。このように、岸田首相が掲げた異次元の少子化対策で、女性の暮らしがますます厳しくなり、結果として少子化は更に加速し歯止めがかかりません。

 

●一人ひとりが大切にされる社会へ
生活者ネットワークは、以前から「税や社会保障は世帯単位から個人単位へ」と訴えてきました。私もメンバーとして参加した東京・生活者ネットワーク ジェンダー問題プロジェクトで2018年に行った調査では、子育て女性・非正規シングル女性・高齢女性100人にヒアリングを行い、政策提案として「男性稼ぎ主世帯主型(標準世帯)生活保障スタイルから両立支援型へ」「税や社会保障は世帯単位から個人単位へ」と政策提言しています。

▶【2018年ジェンダー問題プロジェクト調査報告】

貧困者の1/4が高齢女性です。年金額に最低保障をつけることや、正規・非正規を問わず仕事の価値に見合う賃金とする「同一価値労働同一賃金」、住居費が高い東京都での公営住宅の拡充や民間の賃貸住宅へ補助としての「住宅給付」など、政策提案につなげていきます。

防災会議の女性委員比率が増えることで、避難所運営の現場でプライバシーの確保や福祉避難所の設置、妊産婦・乳幼児を持つ女性への支援、ペット対策などをはじめ対応が相当数すすむことが調査結果にも如実に表れていますが、東日本大震災や能登地震でも大きな課題になっています。

性別でなく個人一人ひとりを大切にするために制度や施策を見直し、ジェンダー平等の視点をあらゆる政策・事業・活動に組み込んでいく「ジェンダー主流化」をすすめるために、政策決定の場である議会に女性を増やしていきましょう。