子ども会議など、泉南市の子どもの権利条例には参加のしくみがいっぱい~関西視察報告①~
8月初旬に関西視察で、子どもの権利条例で先駆的な大阪府泉南市を訪れました。2012年の条例制定までの歩み、子ども参加と子ども会議、公立学校での取り組み、子どもの権利委員会などについて、泉南市の子ども政策課長、小学校の校長、子どもの権利委員として活動されている市民委員のお二人から現場の取り組みを伺いました。
条例制定の過程から子ども参加を大切にしており、泉南市子どもの権利条例の前文には、泉南市の小学生の生の声がそのまま表現された「泉南・子ども・憲章」が盛り込まれています。
泉南市では、条例制定にかかわった3部局(人権、子育て、人権教育)が中心となり、条例は作っただけで終わりではない、使いながら育てていくことが大事という理念のもと、制定後の普及啓発や市民参加による検証に取り組んでいます。行政計画は見直しの際に変わったり首長が変わると方針が変更されることもありますが、条例があることで、その中に位置づけられている子どもの権利委員会や子ども会議などの予算も確保できるなど、条例制定の意義は大きいと感じました。
同時に、条例策定の段階から子どもの参加や市民のかかわり、参加の機会があることで、自分たちの条例を体感してみんなで大切に育てていこう、という啓発にもなっているそうです。
学校現場と連携して子どもの権利学習や子ども会議などの実践を通して、子どもたちが受け身ではなく何ができるかを考えるなど、権利の主体者であることを自覚できるようになったとの報告がありました。
そのような中で、条例施行後10年経った2022年に中学生の自死という悲しい出来事が起こりました。「子どもの権利が理解されていない」「子どもの権利が軽視されているのではないか」「大人が都合よく子どもの権利を解釈しているのではないか」など、子どもの権利委員会から条例が形骸化してるのではないか、と警鐘が慣らされました。
今年で条例ができて12年。市の担当者が交代することで各部署に理解者が増える一方で、条例制定当初の理念を受け継ぐことや、条例の広がりの質をどのように高めていくのか課題もあるとのこと。今後、相談・救済機関の設置についても検討すべき課題としてあげられていました。
今回の視察では、どの報告からも子どもの気持ちに寄り添い耳を傾けることで、自分はこれでいいのだと自信を持ち自ら課題をクリアできるようになるなど、子どもたちがエンパワーされていく様子を伺いました。権利教育とは、子どもの権利条例の条文を教えることではなく、子どもの生活や体験の場面を通して感じてもらうこと。周囲の大人も一緒に、体験を重ねていくことで積み上がっていくのだと実感しました。
2021年4月に東京都こども基本条例が施行されて3年が経ちました。この間の取り組みを検証して条例をより実効性のあるものにしていくこと、子どもオンブズやコミッショナー制度など、子どもの権利救済機関の設置も引き続き求めていきたいと思います。