しくみで分けるのではなく、一人ひとりに必要な教育を

都政フォーラム「子どもの権利の視点からインクルーシブ教育をすすめるために~子どもの自己肯定感を高める学びの環境づくりにむけて」を開催しました。

冒頭、にじいろなかまの後援会長、恩賀洋子からご挨拶。

続いて、日本大学文理学部総合文化研究室准教授で学校心理士でもある土屋弥生さんから、高校現場で20年以上不登校や学びに課題をかかえる子どもたちと向き合ってきた取り組み実践をもとにお話を伺いました。

今回のテーマは子どもの自己肯定感を高める学びの環境づくり。
子ども自身が疑いようのない体験を通して、自分自身ができたことを実感すること。その経験こそが自己肯定感を高めることにつながること、スモールステップでそのような経験ができる場や機会をどう作っていくのかが大事というお話は、とっても分かりやすく共感しました。

子どもたちの特別支援は取り出しのみか?についても興味深いお話がありました。取り出しなど個別支援で不足を補う支援は必要だけれど、重要なことは、集団のなかですべての子どもたちが自己肯定感を育む教育ができること。インクルーシブなクラスの環境にしていくためには、個別の支援だけでなく、クラスをなじめる場にすることが大事。子どもたちが一緒にいることが楽しいと思えるクラス全体の雰囲気づくりが大切。集団の中で、全ての子どもたちが犠牲にならない環境を、教育現場全体で共有していく必要があるとのことです。

また、言葉で人とつながることが苦手な場合や言葉だけでのコミュニケーションは分断を生むこともあるので、農業体験や園芸、キルト製作など、言葉によらない活動を通して自分の役割を実感したり、お互いの距離感を体で感じるなど、体で学ぶ体験も重要というお話も分かりやすかったです。

ハンドベルの活動が不登校の子どもたちに受入れられたエピソードからは、全員が違う音でメロディを奏でることは、一人ひとりが違っていて誰にも代わることのできない「自分」の役割を担っていると、子どもたちが感じられるのかもしれません。

そして大事なこととして、このような学びの場づくりには、教員やスタッフの数とともに力量が必要であり、教員と子どもにかかわる支援員との連携も欠かせないというお話もありました。

その後、東京都・国立・国分寺の取り組みを共有しながら参加者の皆さんと意見交換を行いました。
私からはコミュニケーションや学習に課題を抱える子どもたちが利用する特別支援教室にかかわる東京都の状況について。通常学級に在籍しながら週に数時間の支援を受ける特別支援教室の教員配置基準が今年の4月から変更し、これまでの子ども10人に1人に対して、12人に1人となりました。また、利用期限が2年までと限定されたことなどを報告しました。

こはまかおる国立市議から、国立市の取り組みとして、通常学級に配置される支援員(スマイリースタッフ)の配置人数が制度開始からこの10年間で3倍の30人に増えていること、スタッフ力向上のための研修で支援員が個別にアドバイスを受けられる機会もあることなど、報告がありました。

小坂まさ代国分寺市議から、国分寺市の取り組みとして、特別支援教室の利用期間について、都の方針では2年までが原則となったが市としては必要な場合は柔軟な運用をするとの議会答弁の内容が学校現場まで伝わっていないこと、通常学級に配置される支援員(クラスアシスタント)の研修が全く行われいない現状等について報告がありました。

後半の意見交換では、会場から具体的な声もあがりました。

★普通級でのインクルーシブ教育は素晴らしい志ではあるが、現時点では普通級でのリソースでは自閉症を含む発達障がいや学習障がい(LD)への対応が難しく、適応障がいのような状態になってしまう子が多くいると見聞きする。普通級でのインクルーシブ教育を実現するためには、20人以下の少人数学級や副担任制度、教科担任制度、普通級を含めた自立活動(感覚統合やSSTなど)なども必要で、都や国の制度改正も必要では。現場の先生たちの「頑張り」に頼るのは限界ではないか。

★発達障がいの有無の関係無く、学級全体の子どもたちの様々な瞬間や困りごとの場面をキャッチし、サポートしている。クラスに馴染めていない子、クラス替えをしたばかりで不安そうな子、等々、様々なお子さんが学校で自分の居場所を見つけて健やかに学んでいけるように、内面の発達を目標としてゆるくあたたかくサポートしている。担任と違い、授業を進める必要が無いからこそ、子ども達の内面の成長に目が向くという事もある。発達障がい児がいるクラスだけに支援員を設置するというのは勿体ないと日頃より考えている。また、支援者が交流したり疑問を解消できる場が必要。

★国分寺市立第9小学校では、コミュニティスクールの取り組みと連携して、保護者や地域のスタッフが3回の研修を受けてボランティアで教室に入り、子どもたちを地域みんなで支えていく活動が現場から始まっている。

このように、通常学級での学びを支えるために、全ての学級に支援員をつけることができれば、教室全体の雰囲気づくりにより丁寧に取り組むことができるのかもしれません。

最後に高瀬かおる国分寺市議より、まとめの挨拶がありました。

”インクルーシブ教育は
学校・家庭・地域で語り合い
みんなで作り上げていくことが大事”

という土屋先生の言葉がとても印象に残りました。子どもを中心に、子どもの立場に立ってどうやったらできるのかを考え続けていくことが子どもの学びや育ちを保障することになり、子どもの権利の視点から考えるインクルーシブ教育につながるのだと思いました。

今日を新たなスタートに、市政・都政連携しながらすすめていきます。

当日は近隣の生活者ネットワークの市議も参加しました。終了後、講師の土屋弥生さんを囲んで。各地域とも連携しながら取り組んでいきます。